類稀なる才能を見出された藤井は、日本将棋連盟の東海研修会へと進む。ここで生涯の師匠となる杉本昌隆との出会いを果たす。入門時のテスト対局で、杉本は少年の尋常ではない指し手に驚愕した。駒の損得に囚われず、全体の働きの良さを重視する大局観は、すでにプロの感覚に極めて近い領域に達していた。
当時の藤井を象徴する有名なエピソードが、対局で負けた際に見せた激しい「号泣」である。敗北が決まると、周囲の目を一切気にせず、床に崩れ落ちて大粒の涙を流し続けた。勝負に対する執念と悔しさは純度100%のエネルギーであり、その悔しさを即座に次の棋力向上へと変換する驚くべき復元力を秘めていた。負けず嫌いという言葉では到底足りない、盤上に対する絶対的な誠実さがそこにあった。