一般的に、個人が100億円を超える遺産を遺して急逝した場合、最高税率55%が課される日本の相続税制のもとでは、半分近くが税金として消える計算になります。しかし、細木数子氏の遺産相続において、親族間の骨肉の争いや相続税破綻といったスキャンダルは表面化しませんでした。そこには、極めて計画的な事業承継スキームが存在していました。
その中核となったのが、妹の長女であり、幼少期から細木数子氏の元で生活を共にしていた姪・細木かおり氏との養子縁組です。2016年、数子氏はかおり氏を正式に養女とし、自らの「後継者」として指名しました。数子氏には実子がいなかったため、法定相続人を明確にし、血族かつ後継者である養女へ一本化することは、後々の親族トラブルを封じる決定的な一手となりました。
生前の手記や特番インタビューにおいて、数子氏は「私が死んでも六星占術を途絶えさせてはならない」と語り、自らの死期を見据えて早くから身辺整理に着手していました。作成された遺言書の内容についても、六星占術の版権を保有する関連法人(株式会社オフィスズィーディーなど)の株式や主要な権利、不動産の管理権限をかおり氏へ集中させる旨が明記されていたと報じられています。
さらに注目すべきは相続税対策の緻密さです。個人名義の現預金をそのまま遺すのではなく、生前の段階で版権管理会社や不動産保有会社へ資産を集約し、株式を年次計画で贈与・移転させる手法が取られました。換金性の高い知財ビジネスを法人の形に落とし込むことで、莫大な個人相続税の直撃を緩和し、安定的に事業を継続できる基盤を整えたのです。一代で財を成したカリスマならではの徹底した防衛策でした。