街頭で「今日は何の日か」と問えば、大半の人が「建国記念日」と答えるはずだ。しかし、1966年に制定された法律上の表記は「建国記念の日」である。たった一文字の「の」――このひらがなひとつに、昭和の国会で繰り広げられた激しい議論の痕跡が刻まれている。
昭和40年代の立法過程において、日本の正確な建国日を科学的・歴史的に特定することは不可能だという慎重論が野党や歴史学者から強く唱えられた。日本という国家がいつ誕生したのか、明確な日付の確証はない。そこで与野党の妥協の産物として生み出されたのが、「日本が成立したその日そのものを祝う」のではなく、「日本が建国されたという出来事自体を感謝し、記念する日」という解釈だった。祝日法(国民の祝日に関する法律)の規定においても、「建国を思い、愛国心をたがねる」日として提示され、特定の建国年月日を直接祝福するニュアンスをあえて和らげるために「の」が挿入された経緯がある。