よしながふみ大奥実写化は過去にも映画や民放ドラマで試みられてきましたが、今回のNHK版は「原作の完結」を受けて制作された初の完全版です。しかし、単なる忠実なトレースにとどまらず、映像メディアとしてのカタルシスを最大化するための計算された再構築が施されています。
NHK大奥原作との違いにおける最大のポイントは、「赤面疱瘡撲滅プロジェクト」を主軸とした科学的・政治的サスペンスの強化です。原作漫画が持つ心理描写の機微を損なうことなく、森下佳子の脚本は、平賀源内や田沼意次、伊兵衛、青沼らが情熱を注いだ「人痘接種」の開発プロセスを、現代の視聴者にも通じる緊迫感あふれる医療エンターテインメントとして再編成しました。
また、福士蒼汰がシーズン1の万里小路有功とシーズン2幕末編の天璋院(胤篤)の二役を演じた点も、ドラマならではの見事な演出です。物語の始まりで大奥の基盤を作った有功と同じ面影を持つ天璋院が、大奥の終焉を見届けるという構造美は、原作ファンからも「映像化ならではの最高のギミック」と高い評価を受けました。