フレグランスボトルの処分を思い立った際、最もやってはいけないNG行動が「洗面所、キッチンのシンク、お風呂場の排水口、あるいはトイレに液体を直接流し込むこと」です。ネット上では「多量の水で薄めながら流せば問題ない」といった無責任な言説が散見されますが、これは設備の構造と化学的性質を無視した危険な誤解です。
香水の大半は、エタノール(アルコール成分)が70%〜80%前後を占め、残りは香料と微量の精製水で構成されています。この濃度は、一般的な手指消毒用アルコールと同等あるいはそれ以上であり、消防法における「第4類引火性液体」に該当する危険物です。排水管の内部にこの高濃度アルコールを注ぎ込むと、排水管のトラップ部分に留まったエタノールが急速に気化します。下水管内に可燃性ガスが充満した状態となり、静電気やライターの火気による引火爆発リスクを飛躍的に高めてしまいます。
家庭内の排水管や下水継手には硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)やゴムパッキンが多用されています。香水に含まれる天然・合成の精油成分や溶剤は、ゴムや特定のプラスチックを膨潤・劣化させる性質を持ちます。一度に大量の香水を流すことで配管接合部のパッキンが溶け、漏水事故へと発展した事例は配管修繕の現場でも後を絶ちません。
さらに見過ごせないのが環境負荷と臭気トラップの崩壊です。下水処理施設では微生物の働きによって有機物を分解していますが、強い殺菌力を持つアルコールと難分解性の合成香料が流入すると、処理能力に悪影響を及ぼします。集合住宅の場合、排水トラップの水に香料の油膜が張り、数週間にわたって配管から自室のみならず上下階の住戸へ異臭が逆流し、管理会社を巻き込んだ損害賠償トラブルに発展するケースも報告されています。