七海の行動原理と人格を理解する上で外せないのが、彼の詳細なプロフィールと「脱サラ」という異色の経歴です。
七海建人のプロフィールは、死亡時年齢27歳、身長184cm、誕生日は7月3日。デンマーク人の祖父を持つクォーターであり、スーツを端正に着こなす理知的な佇まいが特徴です。彼がなぜ一度呪術界を去り、そしてなぜ再び地獄のような戦場へと舞い戻ってきたのか。その理由は「過去編(懐玉・玉折)」と彼の回想に深く刻まれています。
東京都立呪術高等専門学校の学生時代、七海は底抜けに明るく前向きだった同級生・灰原雄(はいばら ゆう)と行動を共にしていました。しかし、2級呪霊の討伐任務のはずが、実際には土地神クラスの産土神(うぶすながみ)という想定外の強敵と遭遇。結果として灰原は無惨に戦死し、遺体の一部となって帰還しました。尊敬していた先輩である夏油傑の闇堕ちと親友の理不尽な死を目の当たりにした七海は、呪術師という生き方に絶望し、高専卒業後に一般企業の証券会社へと就職します。
金融機関での営業生活は、富裕層の金を右から左へ動かし、数字だけを追い求める乾いた日々でした。「呪術師はクソだ」と感じて逃げ出した一般社会で彼が直面したのは、「労働もクソである」という残酷な現実でした。金勘定の渦の中で心を摩耗させ、ただ生存のためだけに時間を切り売りする毎日。
そんな彼を呪術界へと連れ戻したのは、行きつけのパン屋の女性店員との何気ない触れ合いでした。彼女の肩に憑いていた低級呪霊を密かに祓った際、女性から掛けられた純粋な「ありがとう」の一言。誰かのために自らの技術を使い、直接感謝されるという確かな実感を得た七海は、「自分は誰かの役に立ち、生きている実感が欲しかったのだ」と気付きます。「同じクソなら、より適性のある方を選ぶ」という醒めた理屈を盾にしながら、彼は再び命懸けの呪術師として生きる道を選び直したのです。