この名言の奥深さをより正確に味わうためには、原典であるフランス語や世界標準の英訳、そして歴代の日本語訳の表現を比較してみるのが近道です。
◆ フランス語原文
「On ne voit bien qu’avec le cœur. L’essentiel est invisible pour les yeux.」
(直訳:人は心によってのみ、よく見ることができる。本質的なものは、目には見えない。)
◆ 英語翻訳
「It is only with the heart that one can see rightly; what is essential is invisible to the eye.」
フランス語の「L’essentiel(エッサンシエル)」は、単に「大切なもの」というより「本質」「不可欠な核心」を意味する強い言葉です。また「On ne voit bien qu'avec...(〜でしかよく見えない)」という構文は、目だけに頼った観察がいかに不完全であるかを強調しています。
日本語訳においては、長年親しまれてきた内藤濯氏による名訳「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」がリズム感と親しみやすさで突出しています。一方で、河野万里子氏の新訳(新潮文庫)では「心で見ないとよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」と、より現代的でストレートな口語体で表現されるなど、訳者によって微妙なニュアンスの差が楽しめる点も魅力です。