円山公園の緑を背に佇むその外観は、重厚な石造りのネオ・クラシカル様式。しかし一歩足を踏み入れると、眼前に広がる世界は部屋ごとにまったく異なる顔を見せる。設計を手掛けたのは、アメリカ人建築家J.M.ガーディナーだ。
「迎賓館」の名にふさわしく、1階の喫茶空間として親しまれる「応接室(ロココの間)」には白と金を基調とした繊細なレリーフが施され、まるで18世紀のフランス宮廷に迷い込んだかのような錯覚を覚える。一方で、旧ダイニングルームである「球戯の間」や「美術の間」に目を向ければ、重厚な木目とステンドグラスが織りなす直線的なアール・ヌーヴォーの陰影が空間を引き締めている。
建物の隅々にまで宿るこの徹底したこだわりこそが、村井吉兵衛が世界を旅して持ち帰った美意識の結晶だ。2026年現在も当時の調度品や照明器具が手入れを重ねられながら現役で使われており、本物のアンティークだけが醸し出す空気が館内を満たしている。