「家の中では、挨拶はおろか一言も会話がありませんでした」——後に田中律子さんがテレビの密着特番や告白インタビューで赤裸々に語ったこの言葉は、視聴者に強烈な衝撃を与えました。関係の破綻は、長女の誕生からわずか2〜3年が経過した頃から急速に進行したと証言されています。
破綻の根本的な原因は、ライフスタイルと気質の決定的な不一致でした。田中さんはアウトドアやマリンスポーツをこよなく愛し、常に人との交流や明るいコミュニケーションを求める外向型。一方の杉本氏は、極めて物静かで休日は自宅にこもって映画や写真に没頭することを好むインドア派でした。さらに、不規則な撮影スケジュールや深夜帰宅が重なるカメラマンという職業柄、生活リズムの乖離は日を追うごとに修復不可能なレベルへと広がっていきます。
当時の様子について、田中さんは次のように振り返っています。帰宅しても「ただいま」「おかえり」の言葉すら交わされず、リビングに漂う重苦しい緊張感。田中さんが「今日の出来事」を話しかけても返答はなく、夫がテレビを見ている背中を見つめながら孤独に涙を流す夜が日常化していきました。食事の場でも視線が交わることはなく、必要事項の伝達はメモ書きをテーブルに置くだけという、事実上の「家庭内別居」でした。世間に対しては「明るいタレントママ」の仮面を被り続けながら、自宅の玄関を開けた瞬間に訪れる完全な沈黙。その耐え難い二重生活は、実に約13年もの歳月に及びました。