2000年代中盤に入ると、発祥の地である深夜ラジオの電波を飛び出し、巨大掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」へ爆発的に浸透しました。その過程で発生したのが、漢字表記の差異に伴う意味の変容です。インターネットの言論空間を観察してきたカルチャー史の視点からも、この2つの使い分けは極めて重要な文脈を持っています。
「厨房(ちゅうぼう)」とは、ネット黎明期に分別を欠いた荒らし行為を繰り返すユーザーを「中学生並みの幼稚な思考」と揶揄した蔑称「中坊」の当て字です。これと結びついた「厨二病」という表記は、単なる思春期の自意識過剰を超え、「ネット上で無知や浅薄さを露呈しながら偉そうに振る舞う痛烈に迷惑な人間」への罵倒語として先鋭化していきました。
一方、メディアやエンターテインメント業界では、ライトノベルやアニメーションの題材としてポジティブに再解釈される潮流が生まれました。その決定打となったのが、京都アニメーション制作で2012年に放送されたテレビアニメ『中二病でも恋がしたい!』です。自らの妄想世界を貫く登場人物たちの純粋さや健気さが描かれたことで、かつての恥ずべき黒歴史は「愛すべき個性」「青春特有の純情」として広く一般社会へも受け入れられるようになりました。