結論から言えば、マンション管理規約においてベランダへのパラソル常設は「グレーゾーン」ではなく「明確な規約違反または使用細則違反」と判断されるケースが大半を占めます。
多くの区分所有者や賃貸入居者が誤解しているのが、ベランダの法的権利です。区分所有法上、バルコニーやベランダは専有部分ではなく、特定の区分所有者に排他的な使用権が認められたマンション専用使用部分(共用部分)に分類されます。したがって、区分所有者が自由に工作物を設置したり、恒常的に景観を変えたりする権利は法的に保障されていません。
さらに見過ごせないのが消防法避難経路の確保義務です。消防法第8条および各自治体の火災予防条例において、バルコニーに設けられた隣戸との隔て板(蹴破り戸)や避難ハッチ(避難はしご)の周囲には、避難の支障となる物品の設置が厳格に禁じられています。展開時の直径が2メートルを超える大型パラソルはもちろん、折りたたんで立てかけてある状態であっても、避難動線を1ミリでも塞いでいれば消防点検時に指導の対象となり、管理組合から是正勧告を受けることになります。
国土交通省が公表している「マンション標準管理規約(単棟型)」第17条および使用細則モデルでも、共用部分に危険を及ぼすおそれのある重量物や強風で飛散する物品を放置することを明確に禁止しています。規約に直接「パラソル禁止」と書かれていなくても、「強風による落下・飛散の危険がある物品」「美観を損なう掲出物」という包括条項に該当し、管理組合の理事会決議によって即時撤去命令が下される実情を認識しなければなりません。