死者の日のビジュアルアイコンといえば、豪華なドレスを着て羽飾りの帽子をかぶった優雅な骸骨貴婦人「ラ・カラベラ・カトリーナ(La Calavera Catrina)」です。20世紀初頭の風刺版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダが、先住民のルーツを否定して過剰に欧米貴族を真似ていた富裕層を皮肉って描いた作品がルーツであり、「いくら着飾ろうと、皮を剥げば皆ただの骸骨である」という痛烈な平等思想が込められています。
現地を訪れる観光客の間でも大流行している死者の日メイクやり方カトリーナの基本ステップは以下の通りです。
- ステップ1(ベース):フェイスペイント用の水性白ドーランを顔全体に均一に塗り、首筋までぼかす。
- ステップ2(眼窩の強調):黒のペンシルまたはペイントで目の周囲を大きく丸く塗りつぶし、その外縁を花びら状に赤や青のドット・半円で縁取る。
- ステップ3(鼻孔の表現):鼻先を逆三角形またはハートの上下逆さまの形で黒く塗りつぶし、骨の空洞を模す。
- ステップ4(口元のステッチ):唇を黒または赤で引き、口角の左右に長い横線を引き、それを横切るように縦の細いステッチ(歯の骨のライン)を描き込む。
現地では広場周辺に数百円〜2,000円程度で本格的なメイクを施してくれるプロの絵師が無数に待機しており、手ぶらで訪れても数十分でカトリーナへと変身できます。
一般に知られていない盲点:巨大パレードは「ハリウッド映画の逆輸入」だった?
ここで一つ、現地の歴史家や古くからの住民が苦笑いとともに語る「ネットの誤解と盲点」を暴かねばなりません。現在、メキシコシティの中心街レフォルマ通りを数十万人規模で埋め尽くすド派手な「死者の日国際大パレード」ですが、実は伝統行事ではなく、2016年に始まったばかりの極めて新しい観光イベントです。
きっかけは、2015年に公開されたスパイアクション映画『007 スペクター』の冒頭シーン。ジェームズ・ボンドがメキシコシティの架空の巨大死者の日パレードの雑踏を疾走するシーンが世界的な話題を呼んだ際、海外から「あのパレードはいつ開催されるのか」という問い合わせが観光省に殺到しました。当時、同市では墓地での厳粛な祈りや家族の集まりが中心で、あのようなハリウッド規模の大行進は存在していませんでした。そこで政府関係者が「需要があるなら実際に作ってしまおう」と逆輸入する形で2016年に初開催されたという経緯があります。
これに対し、2003年の宣言を経て2008年に登録された死者の日ユネスコ無形文化遺産経緯を辿ると、本来保護されるべき対象は「先住民族の共同体に受け継がれてきた農耕暦と死者崇拝の儀礼」でした。メキシコシティのメガパレードがエンターテインメントとして世界的な成功を収める一方、オアハカやパツクアロの先住民コミュニティからは「神聖な祈りの場が過剰なテーマパーク化の波に晒されている」という危機感の声も上がっています。旅行者としては、この「祝祭の商業化」と「先住民族の純粋な信仰」の二重構造を理解した上で現地を訪れるのが真の教養と言えます。