今年の初競りでは、一杯数十万円の値がつくことも珍しくなくなった。特に「極み」と呼ばれる最高級ブランドは、東京や海外の富裕層に向けて直行便で運ばれていく。地元の老舗料亭の店主は、「仕入れ値が上がりすぎて、常連さんに申し訳ない」と肩を落とす。かつてのように気軽に「ちょっとカニでも」と言える時代は終わったのかもしれない。それでも、あの濃厚な味噌と甘みのある身を求めて、人々は金沢へ足を運ぶ。
背景にあるのは、単なるインバウンド需要だけではない。地球規模の海水温上昇に伴う漁獲量の不安定化が、供給側の焦りを生んでいる。市場関係者は「獲れる量が減れば、当然価格は上がる。だが、品質だけは絶対に落とさないのが石川のプライドだ」と語る。買い手と売り手のせめぎ合いが、毎朝の港で繰り広げられている。