監視カメラが街中に張り巡らされ、世界屈指の治安監視システムを誇る中国において、なぜプライベート空間での盗撮がこれほど横行するのでしょうか。中国で盗撮が多い理由と背景を探ると、単なる個人の性的嗜好を満たすためではなく、莫大な利益を生み出す「ブラック産業チェーン(黒色産業鏈)」の存在が浮かび上がってきます。
中国盗撮組織の摘発事例から明らかになったのは、カメラの設置役、機器の調達役、動画の編集・販売役、そして決済・マネーロンダリングを担うグループが完全に分業化されたシンジケートの構造です。個室に設置されたWi-Fi機能付き超小型カメラのIPアドレスや視聴権限は、Telegramなどの暗号化通信アプリを介して数百元から数千元(日本円で約数千円〜数万円)で売買されています。さらに、リアルタイムの生配信を視聴できる「VIP会員権」が高値で取引されるなど、安定した収益源として地下市場に定着してしまっている実態があります。
加えて、華南地域を中心とする世界最大の電子部品集散地において、ピンホールレンズや超小型通信モジュールが安価かつ容易に入手できるサプライチェーンの存在も見逃せません。高性能な盗撮機材がわずか数十元(数百円程度)から購入可能であり、参入障壁が極めて低いことが、摘発をすり抜けて次々と新たな組織が生まれる構造的要因となっています。