住宅街で耳にする鳩の鳴き声は、大きく分けて2種類存在する。日本古来の在来種である「キジバト」と、都市公園や駅前を占拠する外来起源の「ドバト(カワラバト)」だ。両者は見た目の羽模様だけでなく、発声のリズム、生息環境、そして人間生活への攻撃性において全く異なる特性を持っている。
多くの人が「朝の目覚まし代わりになって腹が立つ」と訴える規則正しい旋律こそ、キジバトの鳴き声「デーデーポッポー」である。音楽の拍子で言えば厳密には4拍子のリズム(休符から入る「ッ・デーデー・ポッポー」)を刻んでおり、トーンは管楽器のように太く深く響く。ネット上では「フクロウの鳴き声ではないか」「誰かがリコーダーを吹いているのかと思った」と勘違いされるケースも後を絶たないが、住宅街の電柱やテレビアンテナの上で規則正しく反復されている場合、その9割以上はキジバトのオスの鳴き声だ。
一方、ベランダの手すりや室外機の隙間から直接聞こえてくる不穏な音の主は、ドバトの鳴き声「クルックー」である。求愛時や興奮時には、喉を風船のように大きく膨らませ、頭を上下に激しく振るいながら「グルルルル…クルックー」と地を這うような重低音を響かせる。単独行動を好むキジバトに対し、ドバトは極めて強い集団帰属性を持つため、この声が聞こえた時点で「複数の個体が周囲に潜伏している」と捉えるのが現場の定説だ。