若林豪を語るうえで外せないのが、フジテレビジョンが誇る2時間サスペンスの金字塔『赤い霊柩車シリーズ』である。片平なぎさ演じる葬儀社の女社長・石原明子と、若林が演じた京都府警の狩矢警部。この二人の絶妙な掛け合いは、サスペンスという緊迫した世界観の中に、どこか温かい安心感と京都ならではの上品な風情をもたらし続けた。
ロケ現場の京都で語り草になっているのが、二人が築き上げた深い信頼関係だ。若林の持つ飄々とした大人のダンディズムと、片平の瑞々しいリアクションが見事に噛み合い、シリーズは実に30年以上の長きにわたり愛された。2023年春、シリーズは惜しまれつつも堂々のファイナルを迎えたが、クランクアップの際、若林は長年苦楽を共にしたスタッフや共演者に対し、万感の思いを込めた感謝を伝えたという。狩矢警部という当たり役を演じきった充足感とともに、ひとつの黄金時代が静かに、そして美しく完結した瞬間だった。