物語は、幼稚園の帰り道に起きた一瞬の悲劇から始まります。結衣が目を離したわずかな隙に、3歳の息子・広は何者かに連れ去られました。犯人は自殺し、手がかりを失った結衣と陽一の夫婦生活は破綻。ふたりは離婚し、絶望の中で別々の道を歩むことになります。
事件から9年後、児童養護施設で暮らす13歳の少年が広本人であることが判明します。広は誘拐直後、アパートの隣室に住んでいた門倉麻子に保護され、麻子を実の母だと信じ込んで暮らしていたのです。しかし、麻子はある事情から広を手放さざるを得なくなり、施設に預けられていました。
再会を果たした結衣と陽一は、広を引き取り再び家族としての生活を再構築しようと試みます。しかし、広の心には「育ててくれた母・麻子」の存在が深く根付いていました。結衣のぎこちない手料理や無理に作った笑顔に対し、広は気遣いを見せながらも壁を作ってしまいます。
最終回に向けて、物語は麻子の再登場によって大きく揺れ動きます。刑期や社会的な断罪を受け入れつつも、広への思慕を断ち切れない麻子。結衣は激しい嫉妬と憎悪に苦しみながらも、広の幸せのために麻子と対峙することを決意します。
迎えた結末において、広は「どちらか一方の母親を捨てる」のではなく、「2人の母親から愛された事実」を胸に前へ進む道を選びます。麻子は広の未来のために身を引き、結衣は「最初から完璧な母親などいない。人は誰しも、時間をかけて母になっていくのだ」という境地に達します。タイトルの『母になる』に込められた真意が回収される、静謐でありながら圧倒的な感動を呼ぶフィナーレとなりました。