物語の舞台が深界六層「還らずの都」へと突入すると、物語のグロテスクさは個人的な惨劇から「共同体全体の構造的な狂気」へとスケールを拡大させます。その象徴が「深界六層 成れ果て村(イルブル)」にまつわる一連の歴史です。
黄金郷を目指した探窟隊「ガンジャ」が直面したのは、飲料水すら確保できない絶海の孤島のような極限状態でした。擬態した原生生物の卵によって体を冒され、下痢と高熱で隊員たちが次々と倒れる中、先住民の少女イルミューイは「欲望の揺籃」と呼ばれる卵型の遺物を取り込みます。子どもを産めない体だった彼女の「子どもが欲しい」という願いは、異形の赤子を次々と産み落としては即座に死に至らしめるという、あまりにも歪んだ形で叶えられました。
衰弱死していく隊員たちを生かすため、リーダーのワズキャンが下した決断は、産み落とされたばかりの赤子を調理し、隊員たちの食糧および特効薬として配給することでした。我が子を奪われ解体されるイルミューイの絶叫が響く中、生き延びるためにその肉を貪り食う大人たち。やがて巨大な異形と化したイルミューイの体内そのものが村となり、住民たちは人間性を捨てて異形化することでしか生存できなくなります。
村のルールとして機能する「価値の精算」システムも特筆すべき残酷さを誇ります。村の共有価値を損なった住民は、身体の各部位や内臓、感覚器を強制的に剥ぎ取られ、価値の穴埋めとして捧げられます。第2期で描かれたマアアさんの肉体削ぎ落とし描写や、母への復讐に燃えるファプタが村人を惨殺し捕食していく光景は、生理的な嫌悪感とともに「生きることへの執着が持つ生々しい暴力性」を鑑賞者の眼前に突きつけました。