安全保障上の議論でしばしば焦点となるのが、殉職と戦死の違いです。日常会話では混同されがちですが、法体制と国際法上の位置づけは完全に異なります。
「戦死」とは、国際法上の交戦権に基づき、国家間の武力衝突(戦争・有事)において敵対勢力の戦闘行為によって死亡することを指します。一方、現在の日本国憲法および自衛隊法の下では、自衛隊が出動して武器を使用する場合であっても、国内法的には「防衛出動」や「治安出動」という警察権の延長または国家自衛の公務執行と位置づけられます。
したがって、仮に防衛出動時に対艦ミサイルや敵部隊の攻撃を受けて自衛官が落命した場合でも、法制上の公式な呼称は「戦死」ではなく「殉職」として処理されます。呼称の違いはあっても、国を背負って命を捧げた隊員に対する敬意と補償の手厚さに変わりはありません。