近年、コンビニエンスストアや大手中華チェーンでの商品化によって一躍全国区の知名度を獲得したのが、中国・陝西省西安市の伝統麺料理「ビャンビャン麺」に使用される文字「𰻞(繁体字:57画)」です。
ビャンビャン麺の漢字の由来には諸説ありますが、最も有力な民間伝承は「貧しい書生が麺屋で勘定を払えず、機転を利かせて店のために誰も書けない複雑な看板文字を考案した」という逸話です。また、「ビャン」という音自体は、職人が幅広の小麦生地を調理台に打ち付ける際に響く「ビャンッ、ビャンッ」という破裂音に由来する擬音語とされています。
この文字は非常に複雑ですが、現地陝西省には筆順を覚えるためのリズミカルな口訣(覚え歌)が存在します。「穴冠に月が昇り、言を真ん中に糸が左右に寄り添い、長が並び馬が立ち、心の上に刀を立て、八字で囲んでしんにょうで運ぶ」といった歌詩に沿って組み立てられており、民衆の生活文化と文字遊びが見事に融合した傑作といえます。