吉田沙保里の指導歴を語る上で避けて通れないのが、母校である至学館大学レスリング部でのコーチ・副監督時代です。同部で長年にわたり二人三脚で歩んできた栄和人氏との師弟関係は、日本女子レスリングの黄金期を築き上げた原動力でした。
現役選手兼コーチとして後輩たちを牽引していた吉田沙保里は、2016年リオデジャネイロ五輪後に至学館大学の副監督に就任しました。しかし2018年、レスリング界を揺るがしたパワハラ問題に端を発し、栄氏が監督を解任される事態に発展します。恩師への敬意とチームを支える責任感との間で葛藤を抱えながらも、彼女は混乱する現場のケアに尽力しました。
その後、2019年1月の現役引退会見を経て、至学館大学の指導現場からも静かに身を引く形となりました。この辞任劇の背景には、学内体制の刷新に加え、特定の大学組織に縛られずレスリング界全体の発展とスポーツ振興に幅広く携わりたいという本人の強い意志があったとされています。