昔から広く知られる「マグロは一生泳ぎ続けないと死んでしまう」という話は、都市伝説ではなく紛れもない生物学的事実です。この特殊な宿命には、マグロ特有のエラの構造が関係しています。
一般的な魚(タイやコイなど)は、エラ蓋を自力で開閉させて水流を作り、酸素を取り込むことができます。しかし、高速遊泳に特化した進化を遂げたマグロは、エラを動かす筋肉が退化しています。そのため、口を開けたまま前進し、口から入った海水をエラに通すことで呼吸を行う「ラム換気法(Ram ventilation)」を採用しています。
これが、マグロが止まると死ぬ理由です。前進を完全に止めてしまうとエラに新鮮な海水が供給されず、わずか数分で酸欠に陥り窒息死してしまいます。
では、彼らは一体いつ眠っているのでしょうか。研究によって判明したマグロの睡眠生態は、非常に合理的です。彼らは完全に動きを止めて眠るのではなく、泳ぐスピードを時速数十キロから時速数キロ程度の低速クルーズに落とし、左右の脳を交互に休ませる「半球睡眠」のような状態を保ちながら、無意識下で泳ぎ続けて休息を取っています。