本作の公開以降、ネット上では「変な家は実話なのか?」「モデルとなった実際の殺人事件や村があるのではないか?」という議論が幾度となく交わされてきました。
結論から言えば、『変な家』は雨穴氏の綿密な構想によって生み出された完全なフィクションです。しかし、なぜここまで「実話ではないか」と錯覚させるリアリティが宿っているのでしょうか。その背景には、日本の民俗学や近代建築における実際の事例が巧みにサンプリングされている点が挙げられます。
地方の因習や「本家・分家」の血縁支配、座敷牢のような隔離空間の存在は、昭和初期までの日本の地方史に実在した暗部です。雨穴氏は、そうした実在の民俗学的モチーフを現代の一戸建て住宅というフォーマットに落とし込むことで、「どこかの街に本当に存在するかもしれない」という強烈な現実感を演出することに成功しています。