武田薬品の財務を語るうえで避けて通れないのが、2019年に完了したアイルランド製薬大手シャイアーの買収劇です。約6兆円という日本企業として過去最大規模のM&Aは、同社を一気に世界トップ10のグローバル製薬企業へと押し上げた反面、莫大な有利子負債を背負い込む結果となりました。
しかし、直近のシャイアー買収に伴う負債の返済状況を検証すると、市場の過度な悲観論とは異なる事実が見えてきます。同社は買収直後から非中核資産の売却を矢継ぎ早に進め、創出される営業キャッシュフローを優先的にデレバレッジ(負債削減)へ充当。純有利子負債/調整後EBITDA倍率は、買収直後の4倍超から2倍台前半の目標レンジへと着実に縮小してきました。
個人投資家が最も警戒する武田薬品の減配リスクについてはどうでしょうか。同社は一株当たり年間配当金を「維持または増配」する累進的配当方針を公約として掲げています。フリーキャッシュフロー(FCF)の推移を見る限り、配当原資を借入金のみに頼る「タコ足配当」の危機的状況には至っておらず、現在の強固なキャッシュ創出力が続く限り、近い将来の大幅な減配シナリオは極めて想定しづらい状況です。