かつて根室の広大な原風景と切ない人間模様を描き、多くの観客の心を揺さぶった映画『ハナミズキ』。公開から長い年月を経た今でも、ロケ地巡礼に訪れるファンは絶えない。近年ではNHKオンデマンドをはじめとする動画配信サービスで過去の名作や根室を取り上げたドキュメンタリーが手軽に視聴できるようになり、作品を追体験した若い世代がふらりとこの街を訪れるケースが増えている。
映像による発信は、もはやマスメディアの専売特許ではない。現地の若者や移住者がYouTubeを活用し、ありのままの根室を世界へ発信し続けている。厳冬期の凍てつく暮らし、漁船のダイナミックな出港風景、地元民しか知らない路地裏の炉端焼き店。過度な演出を排したリアルな日常が、都市部で暮らす人々の心を捉えている。
「映画で見たあの風情と、ネット動画で見る今の人々の営みが重なって見えた」。旅人たちはスクリーンの幻影を追うだけでなく、いま息づく街の確かな息吹を確かめるためにこの地を目指している。