ロボット兵の造形美を語るうえで外せないのが、そのデザイン的ルーツと、しばしば比較される『風の谷のナウシカ』に登場する「巨神兵」との構造的差異です。
原点は1941年の米アニメ『スーパーマン』の強奪ロボット
宮崎監督自身が過去の対談や著書で明かしている通り、ロボット兵の視覚的プロトタイプは、1941年にアメリカのマックス・フライシャー(Fleischer Studios)が制作した短編アニメーション映画『スーパーマン(The Mechanical Monsters / 謎の現金強奪ロボット)』に登場する大型飛行ロボットです。
折りたたみ式の金属翼を羽ばたかせてビルの谷間を飛び、金庫を破壊して財宝を奪い去るこのレトロフューチャーなロボットに、少年時代の宮崎監督は強い衝撃を受けました。「関節が蛇腹のように動き、飛翔する金属生命体」というイメージは40余年の熟成を経て、『ルパン三世』のラムダへ、そして『天空の城ラピュタ』のロボット兵へと見事に昇華されたと証言されています。
混同されやすい「巨神兵」との決定的な違い
ジブリ作品において世界を滅亡へと追いやる古代の超兵器として、ロボット兵は『風の谷のナウシカ』の「巨神兵」としばしば同一視されます。しかし両者は、作品世界はもちろんのこと、その生物学的・工学的アプローチにおいて真逆の存在です。
- 巨神兵(ナウシカ):人工子宮によって培養された「生体兵器(人工の肉体と骨格を持つ巨人)」。遺伝子工学の極致であり、放射能を伴う陽電子砲のような熱線を発射し、自壊しながら崩落していく有機的な恐怖を象徴。
- ロボット兵(ラピュタ):精巧無比な冶金工学と高度情報処理によって作られた「自律型無人オートマタ」。未知の金属・特殊セラミックスで構成された完全な無機物であり、プログラムされた使命を数百年・数千年にわたって遂行し続ける哀愁を象徴。