調理の現場において、板こんにゃくの最適な下茹で時間は「沸騰した湯に入れて再沸騰してから2〜3分」です。この数分間を守るだけで、独特のアルカリ臭が抜け、料理全体のクオリティが跳ね上がります。
疑問に思われがちなのが「臭みを徹底的に抜きたいから5分以上しっかり茹でる」という行為の是非です。食品科学の知見によれば、こんにゃくは茹ですぎると明確に劣化します。こんにゃくの骨格は、主成分であるグルコマンナンがアルカリ凝固剤(水酸化カルシウムなど)によって強固な三次元網目構造を形成し、その網目の中に約97%もの水分を抱え込むことで成り立っています。
グラグラと沸き立つ熱湯の中で5分、10分と必要以上に煮沸を続けると、ゲルの網目が過剰に収縮し、内部の水分が外へ押し出される「離水現象(シネレシス)」が急速に進行します。その結果、ぷるんとした弾力は失われ、まるで古びたゴムタイヤのように硬くパサついた食感へと変貌してしまうのです。一度脱水して硬化したこんにゃくは、その後の煮汁を吸い込む隙間を失うため、どれだけ長時間煮込んでも味が乗らなくなります。