「福六十」を調べる上で避けて通れないのが、七福神の一柱である福禄寿(ふくろくじゅ)との関係性です。両者の違いを理解するためには、中国の道教における「三徳(福・禄・寿)」の概念に立ち返る必要があります。
福禄寿は本来、以下の3つの現世利益を具現化した神格です。
- 福(ふく):子孫繁栄・幸福
- 禄(ろく):財運・出世・高禄
- 寿(じゅ):長寿延命・無病息災
一方、「福六十」として流布している概念は、この「禄(ろく)」が数字の「六」に、「寿(じゅ)」が数字の「十(じゅう)」へと音韻変換、あるいは草書体の視覚的類似性から置き換わったものと考えられます。江戸時代から明治初期にかけての寺社彫刻や扁額(へんがく)では、高度に意匠化された崩し字が多用されたため、参詣者が「福禄寿」を「福六十」と誤読して口承していった経緯が有力視されています。