出版事情において最大の地殻変動を起こしているのが、AmazonのKDP(Kindle Direct Publishing)によるペーパーバック出版です。読者がAmazonで「ペーパーバック」と記載された商品を購入すると、注文ボタンが押された瞬間に印刷データが国内の専用印刷拠点へ送られ、高速デジタル印刷機が本文と表紙を1冊だけプリント・製本して即日発送します。
かつての自費出版といえば、最低でも数十万〜数百万円の費用を投じ、初版数百部から数千部を一括で刷って自宅の部屋をダンボールで埋め尽くすリスクを背負うのが常識でした。しかし、KDPのオンデマンド印刷(POD:Print on Demand)は、初期費用0円・在庫リスク完全ゼロで自著を紙の書籍としてAmazonのプラットフォーム上に並べることを可能にしました。
著者の収益構造も極めて合理的です。ペーパーバックのロイヤリティ(印税)率は設定価格の一律60%に設定されています(※Amazon配送料等の条件による)。そこから「印刷コスト」を差し引いた残額が著者に支払われる仕組みです。
たとえば、本文白黒・150ページの書籍を販売価格1,200円(税抜)で設定した場合の試算は以下のようになります。
【試算例:150ページ・白黒書籍の場合】
・固定コスト:約175円
・ページ単価コスト:約2円 × 150ページ = 300円
・合計印刷コスト:約475円
・売上総配分(定価の60%):1,200円 × 0.6 = 720円
・著者の手取り印税:720円 − 475円 = 1冊あたり245円(実質印税率 約20.4%)
商業出版における一般的な紙書籍の印税が「8%〜10%」であることを踏まえると、印刷コストを差し引いた後でも20%前後の高い実質利益率を維持できる計算になります。これにより、電子書籍(Kindle)で一定の読者を獲得したビジネスパーソンや個人クリエイターが、自身のコンテンツを「紙の実物資産」へと展開する「Kindle書籍の紙本化」が一大潮流として定着しています。