全国の税務相談窓口やオンラインの税務コミュニティで、確定申告直前の2月に急増するのが「貸借対照表を作ったら、事業主借の残高がマイナス表示になってエラーが出た」という悲鳴に似た相談です。会計理論上、事業主借は貸方(右側)にのみ残高が発生する科目であり、事業主借がマイナスになる原因は100%入力側のヒューマンエラーに起因します。
都内の税理士法人で数多くのフリーランスの申告を支援してきたチーフ税理士は、現場の実態について次のように証言します。
「決算書上で事業主借がマイナスになっている方の帳簿を精査すると、ほぼ全員が『プライベート口座から事業経費を支払った際、仕訳の左右を逆に登録していた』か、『事業主貸で処理すべき生活費の出金を事業主借のマイナスとして入力していた』のどちらかです。本来、負債科目である事業主借を借方に打ち込んでしまうと、残高がマイナスに潜り込み、青色申告の65万円控除を受ける要件である貸借対照表の整合性が崩れてしまいます」
実際にSNSや知恵袋等のコミュニティで共有されている失敗手記を検証すると、特に以下の2つのパターンでマイナス事故が多発しています。
第1に、キャッシュレス決済の還元やポイント利用の逆仕訳です。個人の楽天ポイント等で事業の消耗品を購入した際、本来は「消耗品費 / 事業主借」とすべきところを、誤って「事業主借 / 現金」と逆方向に登録してしまい、残高を削ってしまうケースです。
第2に、開業準備期間中の支出(開業費)の登録ミスです。独立前の数ヶ月間に個人の貯蓄から支出したオフィス家具代やドメイン取得費用を、開業日である1月1日や設立日に一括登録する際、借方と貸方の対応関係を取り違えてマイナスを引き起こします。もし青色申告決算書の貸借対照表で事業主借に「△」や「-」の記号が出現した場合は、仕訳日記帳で検索条件を「事業主借 かつ 借方」に設定して検索してください。そこにリストアップされた仕訳が、マイナスを引き起こしている元凶です。