快挙達成の瞬間、世界のメディアは19歳の新王者誕生を熱狂的に報じました。アメリカのNBC放送は「日本の若き天才が男子フィギュアの新たな地平を切り拓いた」と絶賛し、イギリスBBCの解説陣も「ショートプログラムの完成度は氷上の芸術そのもの。男子フィギュアの歴史を変えた」と惜しみない賛辞を送りました。
ロシア現地でも、かつてプルシェンコを熱烈に応援していた現地の目の肥えたファンたちが、羽生の卓越した柔軟性と音楽との調和に惜しみないスタンディングオベーションを捧げました。海外メディアの反応は一様に「驚異的な才能の台頭」を祝福するものでした。
しかし、当の本人が見せた姿は対照的でした。ソチオリンピックの表彰式で金メダルを首にかけられた羽生結弦の表情には、満面の笑みだけでなく、どこか複雑な翳りが浮かんでいました。共同記者会見で彼が発した第一声は、周囲を驚かせるものでした。
「金メダルを獲って言うのも何ですが、フリーの演技に関しては悔しい思いでいっぱいです。オリンピックのチャンピオンとして、もっと強い演技がしたかった」
19歳にして世界の頂点に立ちながら、完璧な演技を遂行できなかった自分を許せないという強烈なアスリートの矜持。この表彰台で見せた「悔し涙」と飽くなき向上心こそが、4年後の2018年平昌オリンピックでの66年ぶりとなる連覇という、さらなる伝説へと繋がる原動力となったのです。