日本以外で右ハンドルを採用している国々にも、それぞれ独自の歴史的経緯が存在します。
大英帝国(コモンウェルス)の遺産:インド・豪州・NZ
イギリスがかつて世界各地に築いた大英帝国(イギリス連邦)の影響は絶大です。インド、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどは、イギリスの統治下で鉄道や道路インフラが整備されたため、宗主国と同じ左側通行がそのまま受け継がれました。独立後も莫大なインフラ改修コストを避けるため、現在に至るまで左側通行を維持しています。
植民地にならなかったタイが右ハンドルを選んだ理由
東南アジアの中で唯一欧米の植民地化を免れたタイが右ハンドルを採用している点は非常に興味深い事実です。当時のシャム国王(ラーマ5世)はイギリス王室と親密な外交関係を結んでおり、最初の自動車もイギリスから寄贈されました。さらに、タイ国内の鉄道建設や近代インフラ整備をイギリス人技師に依頼した経緯から、自然とイギリス式の左側通行が定着したのです。
ナポレオンが変えた欧州大陸のルール
対照的に、欧州大陸が右側通行一色になった背景にはナポレオン・ボナパルトの存在があります。中世ヨーロッパの騎士も右手で剣を扱うため左側通行が一般的でしたが、左利きだったとされるナポレオンは戦術的な奇襲を狙って軍隊を右側から進軍させました。ナポレオンが征服したフランス、ドイツ、イタリア、スペインなどの地域には右側通行が強制され、そのまま欧州大陸の標準ルールとなったのです。ナポレオンに屈しなかったイギリスだけが、伝統的な左側通行を守り抜きました。