皇室の地方行幸啓は、華やかな報道の裏で極めてハードな移動と環境変化を伴います。取材陣の間では周知の事実ですが、両陛下がお立ち寄りになる視察先は、沿岸部の被災地や山間部の農業施設など、気象条件の厳しいロケーションが数多く含まれます。
例えば、過去の全国植樹祭や国民文化祭などの屋外式典では、最大瞬間風速10mを超える突風が吹き荒れる中でも、儀典は滞りなく進行します。民間のアナウンサーやタレントであれば、強力なハードスプレーで髪を一分の隙もなく固定するところですが、皇室のヘアメイクではそうした人工的なセットは好まれません。国民と直接言葉を交わす「お声がけ」の場において、威圧感を与えない自然な風合いを保つことが最優先されるためです。
さらに、沿道に詰めかけた数千人から数万人規模の奉迎者に対し、両陛下は車の窓を全開にして笑顔で手を振り続けられます。時速数十キロで走る車両の窓から吹き込む風は、どれほど完璧にブローされた髪であっても数分で乱してしまいます。国民への温かい配慮の代償として生じた髪の乱れを、一部のネット言説が「身だしなみの乱れ」と曲解してしまった点には、大きな認識の齟齬が存在します。