学術的な知名度にとどまっていたこの生物を一躍スターダムに押し上げたのは、映像メディアとインターネットカルチャーの爆発的な相互作用でした。
火付け役となったのは、英国BBCが2006年に制作した自然ドキュメンタリー番組『Planet Earth』です。息を呑むような大自然の映像美の中で、突如カメラを見つめたチベットスナギツネのあまりにシュールな静止画が切り抜かれ、海外掲示板Redditなどを経由して日本の2ちゃんねる(現5ちゃんねる)やTwitter(現X)へと波及しました。
チベットスナギツネ ネットの反応は熱狂的で、「悟りを開きすぎている」「一切の感情を捨て去った顔」「鏡を見た時の自分にそっくり」といった自虐や共感を込めた投稿が瞬く間に拡散。コラージュ画像やLINEスタンプ、ファンアートが大量に生み出されました。
このブームを決定づけたのが大手飲料メーカーのテレビCM展開です。チベットスナギツネ カルピスCMとして記憶されている演出では、登場人物たちの日常のやり取りの中に、あの何とも言えない虚無的な眼差しを浮かべたチベットスナギツネのカットが絶妙な間合いで差し挟まれ、視聴者の爆笑を誘いました。自然界の孤高のハンターが、ポップカルチャーにおける「究極のツッコミ役」として定着した象徴的な出来事です。
さらにSNS上ではチベットスナギツネ 似てる芸能人の検証が定期的に盛り上がりを見せます。感情を顔に出さず、冷静沈着なコメントで笑いを取るお笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんやピースの又吉直樹さん、俳優の前原滉さんなど、知性的かつ独特のクールな眼差しを持つ著名人の名前が挙がり、愛嬌あるアイコンとして親しまれています。
生体に会えない欲求はプロダクト消費へと向かい、チベットきつね グッズ ぬいぐるみの市場も活況を呈しています。フェリシモのユーモア雑貨ブランドをはじめ、各社から発売された四角い顔を忠実に再現したクッションやティッシュカバー、精巧なカプセルトイ(ガチャガチャ)は入荷即完売を繰り返すほどのロングセラーを記録しています。