展示室の最深部でひときわ強烈な存在感を放っているのが、宮崎駿監督の手による膨大なイメージボードとラフスケッチだ。アカデミー賞を受賞した『君たちはどう生きるか』の制作初期に描かれた未公開原画の数々は、線のひとつひとつがまるで生き物のようにうねり、紙の繊維にまで執念が染み込んでいるかのような凄みをたたえている。
彼が生み出すファンタジー映画は、なぜ国境や世代を超えて観客の心臓を掴んで離さないのか。消しゴムで何度も修正され、鉛筆の粉で黒ずんだ原稿用紙がその答えを無言で語る。妥協を一切許さない構図の切り込み方、キャラクターの体重や風の抵抗までも描き分ける狂気的なディテール。天才の頭の中を覗き込むスリルに、思わず息を呑む。