2005年2月に7枚目のシングルとしてリリースされた『黒毛和牛上塩タン焼680円』。リリース当時、音楽チャートや情報番組を騒然とさせたのは「実在する焼肉屋のメニュー」を連想させる前代未聞のネーミングでした。
本人が当時の音楽雑誌インタビューやメディアで語った制作の背景によると、きっかけは「網の上でじわじわと焼かれて縮んでいく牛タンの姿が、好きな人の前で緊張して熱を帯びる乙女心やスキンシップの官能さに重なった」という直感的なひらめきでした。単に奇をてらったわけではなく、「ジュウと音を立てて脂が滲み出る瞬間」と「男女の距離がゼロになる瞬間」を重ね合わせるという、研ぎ澄まされた比喩表現から誕生したのです。
デビュー曲『桃ノ花ビラ』から『さくらんぼ』『甘えんぼ』とヒットを連発していた大塚愛にとって、この楽曲は彼女が持つ「キュートさ」の裏にある「毒気」と「女性の生々しい情動」を完璧にパッケージングしたターニングポイントとなりました。