原作読者の間で長年最大の謎とされてきたのが、「なぜ悟空は超サイヤ人に変身したあと、界王拳を使わなくなったのか」という疑問です。超サイヤ人(基本倍率50倍)に界王拳を重ね掛けすれば数百倍から千倍もの戦闘力に跳ね上がるはずですが、作中で悟空がその手段を選ぶことはありませんでした。この超サイヤ人と界王拳を併用できない決定的な理由は、両者の発動原理が持つ根本的な矛盾にあります。
超サイヤ人への変身は、クリリンを理不尽に殺されたような「激しい怒り」によって感情を高ぶらせることで引き出されます。感情が荒ぶり、放出されるオーラが激しく揺れ動く超サイヤ人の状態は、内的な気のバランスが極めて過敏で不安定です。これに対して界王拳は、体内の気を寸分の狂いもなく集中させ、研ぎ澄まされた集中力でコントロールしなければなりません。
荒れ狂う超サイヤ人のエネルギーに界王拳の強烈な負荷を上乗せした場合、気のコントロールは一瞬で破綻し、使用者の肉体は耐えきれずに即死・四散するという設定がのちに公式に語られています。つまり、精神状態の方向性が「激昂」と「静謐な集中」という正反対のベクトルを向いていたため、長らく併用は絶対不可能なタブーとされていたのです。