盛岡駅の構内を歩けば、漂ってくる香ばしい甘辛いタレの香りに足を止めずにはいられない。かつて駅弁といえば、旅の道中に買い求める「移動の伴奏」であった。しかし2026年現在の盛岡駅改札外コンコースは、それ自体が全国の食通を集める一大グルメスポットへと変貌を遂げている。
特に注目を集めているのが、地元名物のウニやイクラを惜しげもなく敷き詰めた「三陸黄金重」や、出来立ての温かさを保持する最新型サーマル容器を採用した牛タン弁当だ。早朝から職人が仕込み、仕上がりから数十分以内のものが店頭に並ぶ。一口頬張れば、駅弁の既成概念が音を立てて崩れ去る。冷めても旨いのではない。温かいものは温かく、極上のコンディションで味わうスタイルが主流となりつつある。
ビジネス客が手早買い求めていく光景の横で、大きなリュックを背負った旅行者がどれを選ぶべきか思案顔でディスプレイを見つめている。駅弁売り場は、岩手県の広大な食の恵みを一網打尽に味わえる「最前線の展示場」なのだ。