伝説的な物語をモチーフとする本作のグラフィックな実写化において、最大の課題とされたのは「内面描写の視覚化」であった。物語の軸となるのは、緻密に張り巡らされた謎が交錯する極上のサスペンスだ。しかし、単なる恐怖や謎解きにとどまらない。その根底に流れているのは、傷ついた人間たちが織りなす重厚なヒューマンドラマに他ならない。
登場人物たちが抱える孤立感や愛憎の葛藤が、目まぐるしい展開の中で鮮明に炙り出されていく。実写化にあたって是枝監督は、安易なCGに頼るのではなく、人間の表情や光と影のコントラストといったクラシカルな映画手法を突き詰めた。息を飲むサスペンスの緊張感と、胸を締め付けるヒューマンドラマの叙情性。この二律背反する要素が見事に融合したとき、観客はスクリーンから目を離せなくなるはずだ。