野田佳彦という政治家の骨格を作ったのは、松下幸之助が設立した松下政経塾の第1期生としての過酷な日々だ。金も地盤も看板もない。あるのは生身の身体と声だけ。千葉県船橋市の駅頭に立ち続け、毎朝欠かさずマイクを握った「朝立ち」は、通算数千回に及ぶ。誰も立ち止まらない冷え切った冬の早朝、駅前ロータリーに響かせた自らの肉声が、彼の政治哲学の原液となった。
「愚直」という言葉は、彼にとって単なるスローガンではない。一度決めたルーティンを何十年も崩さない執念は、時に周囲を呆れさせるほどの頑固さへと転化する。松下幸之助から直接叩き込まれた「素直な心」とは、他人の言いなりになることではなく、私心を捨てて本質を見極めること。この青年期の過酷な原風景こそが、後年のブレない立ち振る舞いの礎となっている。