天ぷらという調理法に対する概念を根本から覆した人物として知られるのが、東京・銀座の名店『てんぷら近藤』の主理人である近藤文夫氏だ。Netflixのアワード受賞ドキュメンタリー番組『シェフのテーブル』でもその妥協なき仕事が高く評価された彼は、「天ぷらとは油で揚げる料理ではなく、衣の中で食材を蒸し上げる調理法である」という独自の哲学を提示してきた。
近藤氏の技術の神髄は、衣の厚みと油の温度、そして引き上げるタイミングの精密さにある。水分を豊富に含む野菜(ニンジンやサツマイモ、アスパラガスなど)を揚げる際、高温の油で衣を素早く固め、内部の水分を旨味とともに蒸気として閉じ描く。衣が薄くカラッと仕上がっているからこそ、中の食材が自らの蒸気でふっくらと蒸し上がり、野菜本来の強い甘みが引き出されるのだ。外食・飲食業界全体に衝撃を与えたこのアプローチは、家庭で揚げ物をする際にも「水分コントロール」の重要性を教えてくれる。