インターネット上の言説では、「人の気持ちがわからない人=悪意に満ちた冷血漢」という過度なレッテル貼りが目立ちます。しかし、取材現場や精神医学の見地から見ると、これは重大な誤解を孕んでいます。
人間の共感システムには、相手の感情に心が引きずられる「情動的共感(感じる力)」と、相手の立場や意図を論理的に推し量る「認知的共感(考える力)」の2種類が存在します。
多くのトラブルにおいて、当事者は相手を傷つけようという敵意を持っていません。単に「Aという行動をすれば相手がBと感じる」という因果関係を予測する脳内シミュレーションが働いていないだけです。この認知特性の違いを「性格が悪い」「性根が腐っている」と人格攻撃にすり替えてしまうと、根本的な解決から遠ざかり、互いに不毛な消耗戦に陥ります。「悪意の有無」と「結果としての被害」を切り離して捉える冷静な視点が不可欠です。