ゴーヤの苦味成分である「モモルデシン」は水溶性で油に溶けやすい性質を持っています。一般的なレシピでは「塩揉みして熱湯で下茹でする」「ワタをスプーンで徹底的にこそぎ落とす」といった下処理が推奨されますが、志麻さんのアプローチは異なります。
テレビ番組の調理現場や自著の手記でも明かされている通り、志麻さんは「ワタは軽く取る程度で十分、むしろ苦味は旨味のアクセント」と捉えています。ワタ自体には強い苦味はなく、種を取り除く程度にとどめることで、過度な水分流出を防ぎ、シャキシャキとした食感を保ちます。
苦味を劇的に抑える決定打となるのが「油の膜」と「強めの塩・旨味の掛け合わせ」です。切ったゴーヤを豚肉の脂や多めの油でしっかりコーティングしながら加熱することで、舌の味蕾に直接苦味が触れるのを和らげます。さらに、豚肉のイノシン酸や卵のコクを合わせることで、苦味を「心地よいキレ」へと転換させるのが志麻流の真髄です。