ダイエット相談の現場で極めて多く見られるのが、「摂取カロリーを基礎代謝以下に抑えているのに、1ヶ月で全く体重が落ちなくなった」という切実な声です。これこそが、体が飢餓に備えてエネルギー消費を強制的に遮断するホメオスタシス(恒常性維持機能)の発動に他なりません。摂取エネルギーが極端に不足すると、血中の活性型甲状腺ホルモン(T3)の分泌量が急減し、体温維持や内臓活動で消費される基礎代謝が最大で約15〜20%低下することが臨床現場の研究で確認されています。
さらに見逃せないのが、糖質や脂質を過剰に拒絶することで引き起こされる「糖新生」による筋組織の自己融解です。十分なエネルギー源が入ってこない場合、肝臓は筋肉のタンパク質をアミノ酸へ分解し、グルコースを作り出します。その結果、見た目はやつれても肝心の骨格筋量が削られ、体脂肪率が上昇したまま代謝能力だけが著しく損なわれる悪循環に陥ります。
もう一つの重大な盲点が、慢性的なストレスと栄養失調がもたらす浮腫(むくみ)です。過酷なカロリー制限は副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌を常時高止まりさせ、抗利尿作用によって細胞間に水分を貯留させます。つまり、体脂肪自体は微量ながら分解されていても、重い水分が体内に溜まることで、外見上も数値上も「痩せない決定的な理由」として立ち現れてしまうのです。