宝石の鑑別現場において、数十年にわたり激しい議論が交わされているのが「どこまでがピンクサファイアで、どこからがルビーなのか」というカラーグレーディングの境界線問題です。
前述の通り、コランダムに微量のクロムが入ると赤くなりますが、クロムの含有量が0.1%〜0.5%程度と少ない場合、石は淡いピンク色になります。ここで問題となるのが、鑑別機関による基準の揺らぎです。
- 米国宝石学会(GIA)などの国際基準:一定の明度・彩度を超えた純粋な赤色のみを「ルビー」と認定し、淡い赤やピンクがかった色調はすべて「ピンクサファイア」に分類する。
- 一部の商業鑑別・国内流通:わずかでも赤みがあれば「ルビー」として鑑別書を発行し、商品価値(販売単価)を高めようとする力学が働きやすい。
「ルビー」と名が付くか「ピンクサファイア」と名が付くかによって、市場価格が2倍〜3倍近く変動することも珍しくありません。宝石を購入する際は、鑑別機関の名称(GIA、中央宝石研究所など)と、そこに記載されたカラー表記を厳密にチェックすることが防犯・資産防衛の観点から極めて重要です。