通説で語られてきた「武力行使を前提とした朝鮮侵攻論」に対し、近年有力視されているのが、西郷隆盛自身の目的は武力行使ではなく使節の派遣にあったとする「遣韓論」の視点である。西郷が望んでいたのは、鎖国政策を固持し国交樹立を拒む朝鮮に対し、自らが丸腰の使節として乗り込み、粘り強く談判を開くことだった。
もし自分が現地で殺害されるような事態になれば、その時に初めて軍を動かす大義名分が立つ――西郷の書簡にはそうした覚悟が綴られている。しかし、本質はあくまで外交交渉による打開だった。西郷隆盛という男の真意は、武力侵攻そのものよりも、道義を通す外交の実現にあったとする説が説得力を増している。