本州の民家で遭遇する黒光りしたクロゴキブリや、飲食店で見かける小型のチャバネゴキブリを想像していると、沖縄の現場で文字通りのカルチャーショックを受けることになる。主役の座にあるのは、外来種として長い年月をかけて定着したワモンゴキブリだ。成虫の体長は40ミリから50ミリ前後に達し、胸部に黄色い輪のような明瞭な斑紋を持つ。
形態の差だけではない。琉球大学の昆虫研究室をはじめとする研究機関や衛生害虫学の知見によれば、ワモンゴキブリは極めて高い飛翔能力を備えており、高所から低所へ滑空するだけでなく、気流に乗って自力で上空へ飛び立つことすら珍しくない。気温28度、湿度70パーセントを超える熱帯夜は彼らにとって理想の活動環境であり、代謝が極限まで活性化しているため、人間が新聞紙を振り下ろす初動動作すら軽々と見切るスピードを誇る。
さらに厄介なのが、繁殖力の凄まじさだ。メスは生涯で数十個の卵鞘を産み落とし、その1つひとつに十数匹の幼虫が詰まっている。年中温暖な気候ゆえに冬眠という概念が存在せず、年間を通じて繁殖サイクルが回転し続ける点も、本土の害虫事情と決定的に異なる。