科学的に根拠がないにもかかわらず、なぜ「HAARP=気象操作・地震兵器」という言説はネット上で根強く残り続けるのでしょうか。ここには人間心理と情報空間特有のメカニズムが存在します。
認知心理学において、人間は突発的な天災や巨大な悲劇に直面した際、「不条理な偶然」を受け入れることに強い精神的負荷を感じるとされています。「自然の猛威によって理不尽に日常が奪われた」と捉えるよりも、「悪意を持った特定の黒幕が意図的に引き起こした」と解釈する方が、原因を単純化して納得感(認知的終結)を得やすいという防衛規制が働きます。
さらに、SNSのアルゴリズムが生み出す「フィルターバブル」と「エコーチェンバー現象」がこの確証バイアスを増幅させます。一度「人工地震」や「気象操作」に関する投稿に関心を示すと、同種の陰謀論コンテンツがタイムラインに優先表示され、あたかもそれが公然の事実であるかのような錯覚に陥ります。信楽MUレーダーのような実在する巨大科学施設は、こうした陰謀論における「視覚的な証拠」として都合よく引用されてしまう構造があります。