ネット掲示板やSNSでは、事件直後から「現場担当者が多額のリベートをもらってグルになっていたに違いない」「無能な社員が全員クビになった」といった過激な憶測が飛び交いました。しかし、これらは実際の事実関係とは大きく乖離しています。
第一の誤解は、「担当部署の単独暴走だった」という見方です。海喜館の案件は、現場の独断ではなく、社長を含む経営会議の承認を経て正式に実行された会社ぐるみのプロジェクトでした。トップマネジメント層がゴーサインを出した案件であったため、現場担当者だけに全責任を押し付けてクビにすることは組織力学上も不可能だったのです。
第二の誤解は、「騙された社員が無能だったから起きた」という言説です。実際に関わった担当者たちは、都内の難関プロジェクトを何件も成功させてきたエース級の不動産営業マンたちでした。「自分たちは百戦錬磨である」という過信と、「これほどの大型案件を他社に奪われてはならない」というプレッシャーが、心理的な確証バイアスを生み出し、明白な危険信号を無意識に遮断してしまったというのが実態です。