岩田剛典を語るうえで避けて通れないのが、その華麗なる出自です。実家は愛知県名古屋市に本社を構える高級紳士靴メーカー「マドラス株式会社」であり、父親の岩田達七氏は同社の代表取締役社長を務める実業家です。大正10年(1921年)創業の歴史を誇る老舗企業であり、一族は名古屋の財界でも広く知られる名家として知られています。
広大な日本庭園を備えた名古屋の生家で育った岩田剛典は、幼少期から厳格な家庭教育を受けました。中学受験を経て慶應義塾普通部に合格すると、母親とともに上京して学生生活をスタートさせます。しかし、敷かれたレールの上を順調に進むだけでは満たされない衝動が、彼をダンスの世界へと引き合わせました。大学在学中にクランプダンスに没頭し、国内外のバトルイベントで頭角を現していく過程で、家業を継ぐ道と表現者としての道の狭間で激しい葛藤に直面します。
自著やドキュメンタリー番組の回想取材によれば、芸能界入りを決断した当時、父親からは強い反対を受け、一時的に家族関係が冷え切った時期もありました。名門の跡継ぎとしての期待を背負いながら、自らの足で立つ道を選んだ決断こそが、現在の彼の骨太な佇まいを形成しています。現在では両親もライブ会場に足を運び、マドラス社と岩田剛典がコラボレーションしたシューズプロジェクトが展開されるなど、時間をかけて築き直された深い親子の絆がファンの間でも温かく受け止められています。